2022年04月07日
コーチングとティーチング。“人を育てる”という点では共通していますが、その中身は大きく異なります。どちらが優れている・どちらが劣っているというものではなく、受け手のレベルや目標に応じて使い分ける、あるいは併用することが大切です。
今回は経営者の方や人事部門の方、会社で部下を指導する役職者の方向けに、コーチングとティーチングの違い、それぞれのメリット・デメリットについてご説明します。どちらを活用すべきか?有効な場面についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
両者の大きな違いは自主性にあり!
コーチングとティーチング。結論からいうと、一番大きな違いは受ける人の「自主性」です。
ティーチング(teaching)とは「教える」という意味です。学校の授業のように指導者が知識や技術を生徒や受講者に教えます。あらかじめ指導するカリキュラムが決まっていて、どちらかといえば指導者が受け手に一方的に指導を行います。また、指導者が答えを知っている事柄を教えることが多いです。たとえば学校で2次方程式の公式を教える、あるいは新入社員に対して自社商品の勉強会を開くのはティーチングに分類されます。
コーチング(Coaching)とは「指導する」という意味です。ティーチングは指導者が受け手に対して一方的に知識や技術を伝授しますが、コーチングは対話を重ねながら、受け手が自分で答えを見つけられるようにサポートします。コミュニケーションを重ねつつ行うため、受け手の主体性が求められます。また、指導の受け手が明確な答え(ゴール)を知っていて、指導者はその答えにたどり着けるよう指導するのが役割となります。たとえば、営業でなかなか結果が出ない部下に対して、「どうしたら売れるようになるか?」を上司が対話しながらいっしょに考えてあげるのはコーチングに該当します。
コーチングとティーチングそれぞれのメリット・デメリットとは?
コーチングとティーチングの大まかな違いについてはご理解いただけたかと思います。ここからはそれぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。たとえば本来であればコーチングのほうが適しているのに、ティーチングを取り入れてしまうと、そのデメリットのみが際立ってしまい、効果が十分に得られません。
以下のようなことを把握した上で、コーチングを取り入れるべきか?ティーチングのほうが適しているか?判断する必要があります。
コーチングのメリット
コーチングのメリットは受け手の考える力を伸ばせる点にあります。コーチングを通じて自分で考える習慣を身につけさせることで、自立した人材を育成することが可能です。指導者と受け手が対話する過程、あるいはコーチングが進んで受け手が自主的に考えられるようになることで、今まででは考えられなかったような独創的なアイディアが生まれる可能性が大いにあります。
自分で立てた目標に向かっていき、指導者と対話をし、答えを見つけるという成功体験を積み重ねることで、受け手のモチベーションが向上する効果も期待できます。加えて職場であれば自ずと指導者(上司)と受け手(部下)のコミュニケーションも活性化し、業務の遂行が円滑になるのも大きなメリットです。
コーチングのデメリット
コーチングは受け手が自分で答えを導き出すことをアシストする指導方法なので、効果が現れるまでにどうしても時間がかかります。場合によっては自分で答えが見つけられない可能性もあります。
また、受け手の経験値が低いとそもそもコーチングをしても効果を得ることはできません。たとえば、そもそも昨日入社した新卒社員に、「どうしたら商品が売れるか?」というテーマでコーチングを行ったとしても、前提となる商品知識や営業の基本スキルがないため、いくら指導しても結果はまず出ないでしょう。
基本的にコーチングは指導者と受け手がコミュニケーションを重ねて答えを見つけていく作業が続くため、大勢を対象にできないというのもデメリットと言えます。
ティーチングのメリット
ティーチングのメリットは短時間で相手に知識や技術を習得させることができる点です。また、講義形式をとれば、大勢を対象とすることもできます。
受け手のモチベーションによらない点もメリットと言えます。コーチングは受け手側にも「答えを導き出したい」「目標に到達したい」という強い主体性が求められます。ティーチングは指導者から受け手に一方的に知識や技術を伝授するため、コーチングほどモチベーションに左右されません。仮に受け手の自主性が乏しかったとしても、ある程度指導として成立し、一定の効果が見込めます。
ティーチングのデメリット
ティーチングのデメリットは受け手の主体性が育ちにくいことが挙げられます。前述のとおり指導者から受け手への一方向的な指導となるため、受け手はどうしても受け身の姿勢になりがちです。ティーチングばかりを行えば知識や技術を伝えることはできますが、自分で考える習慣が身につかない、自立ができないといった弊害が生じるかもしれません。
また、ティーチングは指導する知識や技術以上のものを生み出さないのも難点と言えます。コーチングであれば指導者と受け手が対話を重ねることで、新たなアイディアや視点が見つかる可能性もあります。ティーチングでは教えてもらったもの以上の事柄を身につけるのは困難です。
自分はどちらを活用するべき?それぞれが有効的に活用できる場面をご紹介!
それでは会社で人材を育成する際にはコーチングとティーチングのどちらを採用すればいいのでしょうか?以上でご紹介した両者の違いやメリット・デメリットを踏まえ、ここからはコーチング・ティーチングそれぞれが有効な場面について考えていきましょう。
繰り返しになりますが、どちらが優れているということはありません。受け手の状況や目的に応じて、適切な方法を選択しましょう。
コーチングが有効な場面
コーチングは受け手が求めている答えを自らが導き出すのをサポートする手法であり、相手のレベルやモチベーションがある程度高いことが前提です。商品やサービスの知識、実務のスキルが身についている上で、「伸び悩んでいる」「もっとレベルアップしたい」という課題や目標を持っている人に対して指導する際に向いています。答えに到達するために上司(指導者)と部下や後輩(受け手)が対話を積み重ねて、いっしょに探求していくことで、大きな成果を得ることができます。
また、受け手の主体性を伸ばしたいケースも適しています。たとえばティーチング形式で一通り知識やスキルを習得させた後でワークや実務を経験させ、「どうしたら目的を達成できるか?」という思考を促すことで、部下や後輩に自分で考える習慣を身につけることができます。
ティーチングが有効な場面
ティーチングは受け手のレベルが低い場合に有効です。たとえば因数分解を習っていない子どもにいきなり因数分解の試験問題を解かせようとしても、当然ながら解答することはできません。まずはティーチングで因数分解の公式を教えてあげる必要があります。同様に新入社員にいきなり「どうしたら商品が売れるか?」「どうしたらヒット商品を生み出せるか?」というテーマでコーチングをしても、あまり効果は期待できません。
まずは新入社員研修を行ってティーチング形式で商品やサービスに関する知識、社会人のマナー、会社の仕組みなど教え、ある程度実務を経験し、前提となる知識やスキルを身につけさせる必要があります。
コーチングとティーチングの併用が有効な場面
コーチングとティーチングをうまく組み合わせることで、それぞれのメリットを享受できます。たとえば新入社員研修でティーチングばかりを行っていると、自分で考える習慣を身につけさせることはできません。研修中にワーク形式の課題を取り入れたり、OJTで実務を経験させながら新しい課題を与えたりして、答えを見つけさせるためにコーチングを実践することで、自主性を育むことができます。また、小さな成功体験を積み重ねる過程を経れば、新入社員のモチベーション向上にもつながります。
まとめ
ティーチングとコーチング、それぞれの違いやメリット・デメリットを把握し、場面に合った指導方法を選択することで、より部下や後輩のスキルやモチベーション、自主性をアップさせることができます。しかし、コーチングは指導者にも高いスキルが求められます。
職場でコーチングを取り入れたい、指導に悩まれているという方、ご自身も受けてみて課題を解決したいと思われている方は、ぜひコーチングのプロである弊社へご相談ください。